皆さんは「ヒヤリハット」という言葉を聞いたことがありますか?
簡単に言えば、“事故にはならなかったけど、事故になりうる可能性のあった事象”のことです。
これは警備業でも多く見られ、事故予防のためにはK(危険)Y(予知)T(トレーニング)というものが重要になってきます。
この記事では、警備業で起こりうる労働災害や事故防止策をご紹介いたします。
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目次
ヒヤリハットとは?
「ヒヤリハット」とは、「一歩間違えば事故になるような危険なことは起きたが、幸い怪我人も出ず大事にはならなかった」というものです。
これは日常生活でも起こることがあり、例えば「電源コードに足が引っかかり転びそうになった」や「子どもが高い所に登って落ちそうになった」などが挙げられます。
「ヒヤリハット」はなんとなく英語と思われがちですが、語源は日本語で、危険を感じる際の「ヒヤリ」「ハッとする」のリアクションから来ています。
意外と単純なネーミングですね(笑)
ハインリッヒの法則
「ヒヤリハット」を語る上で欠かせないのが「ハインリッヒの法則」です。
「ハインリッヒの法則」とは、アメリカの“ハインリッヒ”という人物が、事故の発生を自身の経験に基づき法則化したもので、「1件の重大事故の背後には、重大事故に至らなかった29件の小さな事故が隠れており、さらにその背後には事故寸前だった300件のヒヤリハットが隠れている」というものです。つまり、細かい事故、または未遂の積み重ねが大事故につながるということです。
この法則は、さまざまな労働現場で事故の注意喚起に活用されており、世界中で事故防止のバイブルとなっています。
警備業で起こる可能性のある事故
2019年(令和元年)時点で、警備業界における「労働災害状況(労災)」は過去10年間で見ると増加傾向にあります。
事故の原因で見ると、「転倒」が43%、「動作の反動・無理な動作」が27%、「交通事故」が14%、「墜落・転落」が9%と、警備業のあらゆる場面に危険な瞬間が潜んでいることが分かります。
では、これを踏まえ、警備業で見られる“危険”の事例を見ていきましょう。
施設警備(1号警備)
労働災害で最も被災者が多いのが施設警備です。
施設内での事故は、不注意が原因で起こることが多く、巡回中の転倒が最も多い事故となります。
2号警備と比べると、事故は小規模なものが多いですが、障害物や人の利用が多い施設内は、より“ヒヤリ”とする場面も多いようです。
【考えられる危険】
・階段、段差などにつまずく
・エレベーターの故障で人が閉じ込められる
・不審人物の侵入 など
交通誘導警備(2号警備)
労働災害に被災した人で最も死者数が多かったのが、工事現場やイベントでの交通誘導警備。
目に見えて“ヒヤリ”とする場面が特に多く、車両誘導や道路での業務が多い分、事故が大規模になりやすいことが特徴に挙げられます。
【考えられる危険】
・工事車両の搬入・搬出時に歩行者や自転車が侵入
・立ち入り禁止エリアへの第三者の侵入
・水分補給できなかったことによる熱中症の危険 など
輸送、身辺警備(3号、4号警備)
貴重品や要人を守る3号・4号警備は就業者が多くないため、1号・2号と比べると被災者や死者数は少ない傾向にあります。
しかし、取り扱うものが「現金」や「人」となるので、より危険が伴い“ヒヤリ”とする場面が命の危機に直結してきます。
【考えられる危険】
・運転時の不注意、居眠り、悪天候等
・重い荷物を少ない人数で搬入
・要人に危害を加えようとする人物の襲撃 など
防止策としてできるのは?
多くの場面で事故の前兆がみられる警備業。
これが事故にならないようにするには、企業・個人がそれぞれ対策をする必要があります。
では実際、どのような策を施せば、事故を未然に防ぐことができるのか見ていきましょう。
KY活動
KY活動とは「K(危険)Y(予知)」するという意味の活動です。
労働災害の原因の96.9%は“ヒューマンエラー”と言われており、KY活動はその人間が起こすミスに着目して危険予知をするというのが目的です。
「人間特性」…人間である以上、誰でも可能性のある特性のことです。例えば「明るくて見えない」「騒々しくて聞こえない」などの、人間の能力上難しい行動が挙げられます。または、取り違い、勘違いなどの「錯誤」「誤判断」、見間違いや思い込みなどもここに含まれます。
「教育・訓練不足」…安全に対する知識や経験がないことによる判断ミスです。これは特に新人や未経験者に多い傾向にあります。このエラーはそもそも“正解の判断”を知らないことから起こる間違いなので、「ミスが起きないように注意して作業をする」以前の問題となり、作業を繰り返し行って、あらゆる判断を身に着けていくしかありません。
「ルール違反」…決められたルールを守らずに行動する近道反応、省略行為のことです。意図せずエラーが起きてしまう「人間特性」と「教育・訓練不足」とは違い、これは自ら意図して行った行動がそのままエラーとして表れるというものです。例として挙げるのであれば、「こうした方が早い」「これぐらいできる」などの慢心が生むものです。
KYTで事故防止へ
事故を未然に防ぐには、KYT(危険予知トレーニング)を行う必要があります。
トレーニング方法は色々とありますが、効果的なのはチーム(部署内)でイラストシートなどに業務・職場に潜む危険を挙げ、その解決方法や注意点をみんなで共有するというものです。
例えば、こういった書き出しを個人個人で行います。
交通誘導警備での例)
【危険ポイント】…工事車両の搬入・搬出時に歩行者や自転車が侵入することによる事故
【未然に防ぐには】…周囲確認を徹底する。常に危険なポイントに目を配る
施設警備での例)
【危険ポイント】…階段、段差などにつまずいて怪我
【未然に防ぐには】…足元をしっかり確認、引継ぎなどで共有、貼り紙などで注意喚起。
輸送警備での例)
【危険ポイント】…重い荷物の搬入を少人数ですることによる事故
【未然に防ぐには】…想定よりも多い人数を準備して対応。足場や現場環境の確認を徹底。
このように、それぞれの意見を見聞きすることで、自分では気付けなかった危険な部分に気づくことができ、より注意力の向上が見込めます。
また、これを繰り返し訓練することで、それぞれが危険への意識を高めることができ、なおかつ解決方法を共有することで、1人ひとりの問題解決能力を向上させるきっかけになります。
朝礼での呼びかけ
そのほかにも効果的なのは、朝礼でのKY活動です。
特に工事現場などの現場では、朝礼は毎日行われることが多いため、日常的に呼びかけることで普段から危険への意識づけができるようになります。
~事故を防ぐために~ 「ヒヤリハット」への向き合い方
本記事で挙げたことは、ほんの一例に過ぎません。
どれだけ対策を考えても、事件・事故が起きてしまうことはあります。
しかし、業務上の危険に企業・個人がしっかりと向き合い、1人ひとりが考えて注意点を共有することが、“1件の重大事故”を防ぐきっかけとなるのではないでしょうか?